まるで美術館!こだわり抜いた空間・モノに心奪われる温泉宿「伊香保温泉 香雲館」#26
目次
ひと目を気にせず湯を堪能。鉄分豊富な湯は優れた泉質とのお墨付きも
提供:香雲館(伊香保でも希少となった”黄金の湯”が湧く大浴場:あうるの湯)
◇編集部:次に温泉についてお伺いします。
◆塚越さん:伊香保温泉には「黄金(こがね)の湯」と、平成になって確認された「白銀(しろがね)の湯」があります。
古くからある「黄金の湯」は、湧き出るお湯が茶褐色で鉄分がとても多い温泉です。
そのことから、身体を芯から温め、鉄分の多い温泉は飲泉もできるので、女性の貧血が治るとされ、子宝の湯とも言われています。
皇族の方が訪れていた頃は、皇族の男の宮様は、海のある葉山の御用邸で体を鍛え、女の宮様は伊香保の御用邸で身体を温めて良い子供を授かりなさいと言われるくらい重宝されていたそうです。
この黄金の湯は、温泉医学で有名なドイツ人医師のベルツ博士より、優れた泉質の温泉地とのお墨付きをいただきました(明治時代頃)。
当館では昔から湯治で人気のあった「黄金の湯」をお愉しみいただけます。
全国でも伊香保温泉だけかと思うのですが、個人で権利を持つ源泉となっていて、黄金の湯を代々継承しているのは、伊香保でも現在は当館を含めて僅か7軒だけの希少な温泉となっています。
提供:香雲館
◆塚越さん:当館の大浴場「あうるの湯」とは、伊香保の地名はアイヌ語の「たぎる湯」を意味する「イカホップ」を起源とする説から、アイヌの守り神であるフクロウに因んだものです。
当館にご滞在のお客様は、隣接する「塚越屋七兵衛」の大浴場もご利用いただけます。
提供:香雲館(隣接する塚越屋七兵衛の大浴場でも”黄金の湯”が源泉掛け流しで愉しめる)
◆塚越さん:また、十の間全ての客室に設えた檜の露天風呂では、時間やひと目を気にせずに、木の香りを感じながら愉しんでいただけます。
客室の露天風呂は、天然温泉ではなくミネラルを溶出し、美肌効果や温浴効果があると言われている麦飯石を通した湯となっています。
提供:香雲館(客室露天風呂の一例)
◇編集部:希少な黄金の湯を愉しむのも、客室で気兼ねなく露天風呂を愉しむのも、いずれも甲乙つけがたいところですね。
食材・器ともに季節を大事に。食欲をそそる色彩豊かな料理の数々
提供:香雲館(夕食の一例)
◇編集部:次に、お料理についてのこだわりなどをお伺いします。
◆塚越さん:お食事は、春夏秋冬で厳選した旬の食材をお客様のお好みに配慮しておもてなしすることにこだわっています。
提供:香雲館(季節のお料理の一例:春(左上)、夏(右上)、秋(左下)、冬(右下))
◆塚越さん:この地域には、美味しいブランド牛やポークが沢山あるのでお肉をメインにしたり、新鮮な鮎などの川魚なども人気があります。
提供:香雲館(お料理の一例:上州牛にぎり(左)、若鮎塩焼き(右))
◆塚越さん:また、海鮮の食材は、生簀(いけす)を備えて、美味しく召し上がっていただけるように配慮しています。
お食事は、ダイニングのあるお部屋以外は、ブライベートな空間となる料亭風のお食事処で、ご家族やご友人だけで気兼ねなく、お愉しみいただけます。
◇編集部:お料理とあわせるお酒などは、どのような種類があるのでしょうか?
◆塚越さん:日本酒は地のものを中心に取り揃えています。
それとワインは、今では新規のお取引が難しくなってしまった新潟のカールドッチワイナリーさんのものや、フランスやイタリヤ、チリのものを取り揃えています。
◇編集部:季節や器にもこだわりを感じ、お食事も五感で感じるおもてなしなのですね。
【ちょっと小話】伊香保温泉は温泉街の原点となる場所だった
伊香保温泉の”はじめて”の一つ目:温泉を使った都市計画
◆塚越さん:伊香保温泉は、いくつかの”はじめて”がある温泉地で、そのうちのひとつが、温泉を使って都市計画をした初めての地と言われています。
440年程前、武田勝頼と織田信長の「長篠の合戦」の頃、武田軍の武士たちが傷を癒すために温泉に浸かっていました。
その後、武田軍は戦に敗れるのですが、上位家臣たちによって、お店の種類や配置を計画しながら、温泉街として発展して行ったのが始まりとされています。
伊香保温泉の”はじめて”の二つ目:温泉饅頭発祥の地
◆塚越さん:二つ目は、「温泉饅頭発祥の地」です。
鉄分の多い茶色の湯の花が舞う「黄金の湯」を模して、茶色いお饅頭が全国に広まっていったと言われています。
そのため伊香保では、誰も温泉饅頭とは言わず「湯の花饅頭」と呼んでいます(笑)。
伊香保温泉の”はじめて”の三つ目:手ぬぐい発祥の地
◆塚越さん:三つ目は「手ぬぐい発祥の地」ということです。
伊香保温泉は、昔からハイソサエティ(上流社会)な温泉地であったことから、ご宿泊のお客様に湯タオルとして手ぬぐいをご提供した初めての温泉地だったそうです。
当時は、白い手ぬぐいが、黄金の湯に浸かり茶色く染まったものを、抱えて東京に戻ると「おっ伊香保に行ってきたんだね、粋だねー!」というような一種のステータスであったそうです。
◇編集部:伊香保温泉には、たくさんの”はじまり”があるのですね。ぜひ発祥の地で饅頭や手ぬぐいを手に取って嗜みたいものですね。