温泉経営者がおすすめする一度は泊まりたい温泉宿#4 奥津温泉-奥津荘-


奥津荘の歴史についてお話を伺えますか?

◆鈴木さん:奥津荘の創業者である曾祖父は、もともと岡山市で江戸時代から続く料亭を営んでいました。

その料亭を訪れた犬養毅(いぬかいつよし)氏が、「君はこの店をたたみ、奥津温泉で旅館を営みなさい」と曾祖父に命じたのをきっかけに、料亭から旅館業へと転身したそうです。

昭和2年、現在の場所に奥津荘を開業しました。

登録有形文化財となっているとお聞きしました。

提供:奥津温泉 奥津荘

◆鈴木さん:はい、内装には少し手を加えていますが、外観は創業当時のまま残しています。

◇編集部:著名な方のご利用も多かったとお聞きしましたが、どのような方がいらっしゃるのでしょうか?

◆鈴木さん:まず、江戸時代の津山藩領主・森忠政(もり ただまさ)です。

森忠政が浸かっていたとされる浴場は、当時の趣きはそのままに奥津荘の浴場として使用されています。

この浴場は「鍵湯(かぎゆ)」と呼んでいます。

鍵湯と呼ばれるようになった由来は奥津温泉を気に入った森忠政が小屋を建て、鍵をかけてお殿様専用の湯としたことから鍵湯と呼ばれるようになったようです。

また、創業のきっかけとなった第29代内閣総理大臣の犬養毅氏や、現津山市出身の第35代内閣総理大臣の平沼騏一郎(ひらぬま きいちろう)氏も、度々奥津荘を訪れて頂いています。

美術界からは、日本を代表する巨匠の一人である棟方志功(むなかた しこう)氏も、度々奥津の地を訪れています。当館内に、棟方氏の作品を幾つか展示しています。

提供:奥津温泉 奥津荘(奥津荘に展示されている棟方志功の版画)

どのようなお客様が奥津荘を利用されていますか?

◆鈴木さん:年間を通じて、滞在されるお客様のほとんどが奥津荘を目的とされています。

秋の紅葉シーズンになると、当館から2kmほどの所にある岡山県屈指の紅葉の名所「奥津渓(おくつけい)」の紅葉を目的に来られるお客様も多くいらっしゃいます。

また、2019年度からお一人のお客様も1年を通してお受けするようになりました。一人でご利用されるお客様も多いです。

いろいろな目的やお好みでくつろいで頂ける様、お部屋は和室・洋室の8部屋をご用意しています。

提供:奥津温泉 奥津荘

また、2020年12月に完全個室の離れをリニューアルし、「清間亭(せいかんてい)」としてオープンしました。

リニューアルをきっかけに、もともと和室だった部屋を和洋室へと変更しております。

サービスのこだわりについて教えてください。

◆鈴木さん:お料理を選ぶことも楽しんで頂けるよう、年間を通じて十数種類のお料理をご用意しています。

地産の山の幸や、日本海・瀬戸内海のどちらも近い地の利を活かした新鮮な海の幸を準備しています。

提供:奥津温泉 奥津荘

献立にもこだわり、量は少なめでも上質な食材を提供するなど、様々なご要望にお応えしてお客様に選んでいただけるよう配慮しています。

また、出汁やお米を炊く水のほか、魚を焼くグリルの下にも温泉を張り、温泉の成分を蒸気として焼き物にいきわたるよう調理しています。

提供:奥津温泉 奥津荘