温泉経営者がおすすめする一度は泊まりたい温泉宿#10 上の湯温泉-温泉旅館 銀婚湯-


創業96年、大正天皇銀婚の佳日に因んで名付けられた「銀婚湯」

提供:銀婚湯

◇編集部:銀婚湯の歴史についてお伺いできますか?

◆川口さん:上の湯周辺では、古くから小規模に自然湧出していたとされています。

大正14年、そこに初代当主の川口福太郎が大量の湯が湧出される源泉を開掘することに成功したことが当館の創業の礎となります。

奇しくもこの日は、大正天皇銀婚の佳日でした。それに因んで当館を”銀婚湯”と命名したそうです。

以来、お宿を代々継承して創業から96年を経て、私で4代目の当主となります。

提供:銀婚湯

◇編集部:偶然重なったとはいえ何かの縁を感じますね。

和の風情や樹木の温もりを全身で感じられる、心地よい空間

◇編集部:旅館のつくりなどこだわりがありましたら教えていただけますでしょうか。

◆川口さん:現在の当館は、周囲を大自然の原生林に囲まれたなか、湯浴みやお食事のあとに四季折々の景観にふれて寛いでいただけるよう敷地内に散策路を整備しています。

提供:銀婚湯(敷地内の散策路)

お宿は、その自然の景観を邪魔せず調和するように純和風の造りとして、建物も樹木の葉が屋根にかかるくらいの程よい高さとして、和の風情や樹木の温もりを感じて頂けるよう配慮しています。

提供:銀婚湯

提供:銀婚湯

提供:銀婚湯

◇編集部:素晴らしいこだわりですね。緑が美しい季節には、旅館内から見える生い茂った木々の風景も絵になりそうですね。

ただ、これだけ広大な敷地の管理は、ご苦労もあるのではないでしょうか。

◆川口さん:この自然環境の景観を維持するため、周辺に人工物が建造されないよう先代から周辺の敷地を増やしています。

現在の敷地は、周囲の原生林の山林を含めると九万坪ほどとなります。

提供:銀婚湯

提供:銀婚湯

遊歩道の周辺は以前は桜の木が多かったのですが、春の一時の桜を愉しむ桜より、お客様をいつお迎えしても、四季折々の新緑や紅葉を愛でていただけるようにと、紅葉や楓、桂に植え替えをしています。

桂に関しては苗木ではなく種から植えて今では桂林になるまで育っています。

提供:銀婚湯(紅葉シーズンの散策路)

◇編集部:景観を維持するために周辺の敷地を増やすとは、すごい徹底ぶりですね。

お写真を拝見させていただくだけでも、心地よい風や生き物の鳴き声などを感じられそうです。

北海道の大自然を独り占めするように楽しめる、森を散策しながらの隠し湯巡り

◇らく湯旅:銀婚湯をご紹介いただいた奥山さんから、広い敷地内に隠し湯と呼ばれるいくつかの野天風呂があると伺っています。

◆川口さん:散策路は全て巡ると1時間ほどなのですが、途中”隠し湯”と呼ぶ源泉掛け流しの野天風呂を設けています。

野天風呂は、もともとは先代が個人的な楽しみで湯浴みしていた源泉でした。

また、宿から徒歩10分ほど離れ、途中敷地内を流れる落部川に架かる吊り橋を渡るなど、ご滞在のお客様をご案内するのもいかがなものかと思いご提供しておりませんでした。

提供:銀婚湯(敷地を流れる落部川に架かる吊り橋)

たまたま常連のお客様にご案内したところ、大自然に触れて心身を癒す素晴らしい温泉なので一般解放すべきと叱咤激励の言葉をいただいたことから、時間をかけて整備しました。

整備後、一般のお客様にご利用いただいたところ大変ご好評をいただき、現在では巨岩や丸太をくり抜いた浴槽など、それぞれ趣向を凝らした5箇所の隠し湯めぐりを愉しんで頂けるようになっています。

提供:銀婚湯(隠し湯:トチニの湯)

提供:銀婚湯(隠し湯:奥の湯・トチニの湯)

◇編集部:露天風呂ではなく野天風呂というのは北海道らしいスケールの大きな贅沢なお話ですね。お宿に備わった内湯や露天風呂と併せると相当な数の温泉施設があり、様々な楽しみができそうですね。

◆川口さん:当館には、5本の源泉が自然湧出していて、湯船は男女別の大浴場と野天風呂、家族風呂など全部で11ヵ所ご用意しています。

源泉の泉質はアルカリ性ですが、それぞれ泉質は微妙に異なり、この源泉を混合して配湯しています。混合した温泉は循環や濾過・塩素殺菌などせずに自然のまま源泉掛け流しの湯を楽しんでいただけます。

湯は、わずかに白くアルカリ性の柔らかい湯で、神経痛・肩こり・腰痛や皮膚病にもよく効くと言われています。特に美肌の湯として特に女性の方には喜んでいただいています。

また、5本の源泉の中には炭酸水素塩泉もあるので保温効果が高く、野天風呂で湯浴みして、湯ざましに散策しながら隠し湯巡りされるのにも良いですね。

提供:銀婚湯(隠し湯:かたらいの湯)

◇編集部:11ヶ所もの源泉掛け流しの温泉とは贅沢ですね。とても一泊では回りきれそうにありませんね。

◆川口さん:そうですね、本州からお越しのお客様は大体連泊でご滞在されます。

提供:銀婚湯(隠し湯:かつらの湯)